「健康トピックス」

北國新聞 ”健康ノート”、”丈夫がいいね”、”健康よもやま話”
金沢有松病院分掲載中

風船で血管広げ命救う 

(2007年4月14日(土) 北國新聞「丈夫がいいね」に掲載分)

命が助かっただけでもありがたいのに、こんなに早く仕事に復帰できるとは。心筋梗塞で倒れ、一時は危篤状態に陥った金沢市内の会社員男性(51)は、入院からわずか一週間で退院でき、喜びをかみしめている。

■晩酌中に発作
発作があったのは二月末。仕事を終えて自宅で晩酌中、急に胸が締めつけられるような痛みを感じ、救急車で金沢有松病院(金沢市)に運ばれた。廣野正明内科診療部長によると、病院到着時には脈が弱く、心臓がいつ停止してもおかしくない状態だった。 男性の心臓の冠状動脈は血栓ができて詰まっており、すぐに手術が行われた。血栓を取り除き、狭まった血管を広げる「ステント留置法」と呼ばれる方法だ。 この方法は近年、医療現場で普及している。手順はこうだ。まず、手首の動脈から冠状動脈までワイヤーを通し、細いプラスチック製の管を伸ばして血栓を吸引する。その後、細く丸めた金属製の筒(ステント)をワイヤーに沿って入れる。この筒の内側には風船がついており、医師が手元の装置で膨らませると拡張し、血管も押し広げる。広げたままの筒を血管に残し、血流を維持するのだ。 手術時間は約四十分。胸を切開する必要もなく、入院期間は従来の二ヶ月から大幅に短縮される。先の男性も早期の職場復帰を果たし、入院前に担当していた企画に引き続きかかわることができた。現在のところ再発の恐れもなく、「気力も体力も充実しています。仕事に全力投球です」と声を弾ませる。ただ、手術が進歩しているとはいえ、心筋梗塞が怖い病気であることに変わりはない。国立循環器病センター(大阪)によると、国内では年間約二十四万人が発症し、うち33%に当たる八万人が命を落としている。心筋梗塞の主な原因は動脈硬化だ。長年、暴飲暴食や喫煙などを繰り返すとコレステロールが冠状動脈にたまり、狭くなる。この状態で動脈の壁が傷つくと、傷口に血小板などが集まって血栓ができ、血管をふさいでしまう。血の流れが止まると一時間以内で心臓の筋肉が壊死し、死に至る。

■ストレスも誘因
予防するにはどうすればいいのだろう。廣野部長は生活習慣の改善に加え、「ストレスをため込まないこと」を挙げる。ストレスが暴飲暴食やたばこの吸い過ぎを招くことが多いからだ。「鈍感力ではありませんが、神経質に物事を考えないことが命を守ります」。廣野部長の助言である。