「健康トピックス」

北國新聞 ”健康ノート”、”丈夫がいいね”、”健康よもやま話”
金沢有松病院分掲載中

ペットボトル症候群 

(2007年7月16日(月) 北國新聞(丈夫がいいね)に掲載分)

夏本番を控え、冷たい清涼飲料水を飲む機会が増えてきた。重宝するのが手軽に持ち歩けるペットボトルだが、しょっちゅう口にすると思わぬ病気に見舞われる。
近年、がぶ飲みが原因で体に変調をきたす「ペットボトル症候群」にかかる人が10代を中心に増えているのだ。

■意識もうろう
金沢有松病院(金沢市)の前川正知院長には忘れ難い記憶がある。5、6年前の秋のことである。深夜、金沢市内の男子学生(18)が病院を訪れ、吐き気やだるさを訴えた。
顔色が悪く、意識がもうろうとしている。血液検査をすると、空腹時の血糖値が800もあった。正常値は80から110である。いつ倒れてもおかしくなかった。学生は即刻入院となり、血糖値を下げる薬の点滴を受けた。聞くと夏場から約3ヵ月間、ペットボトル入りのジュースを毎日3リットル近く飲んでいたという。典型的なペットボトル症候群だった。

同症候群は医学的には「清涼飲料水ケトーシス」と呼ばれる。ジュースを飲み続けていると血糖値が高くなり、250を超えると糖分の代謝を促すホルモンの働きが弱くなる。500を超えると、
体は糖分の代わりに脂肪を分解し、エネルギーとして使い始める。脂肪が分解されるとケトンと呼ばれる酸性物質が体内に蓄積して脳細胞を攻撃し、吐き気や意識障害などを引き起こすのである。

厄介なのは、ジュースを飲んで血糖値が上がると尿の回数や量が増え、のどが渇いてまたジュースを飲み、さらに血糖値を高くするという悪循環に陥ることだ。
街中でペットボトルを片時も離さない子供を見かけるが、前川院長は中高生の患者が増加傾向にあると指摘する。
治療は糖の代謝を促す薬の注射や点滴が中心となる。先の学生は1週間ほど点滴を続けた結果、血糖値が正常範囲に戻り、吐き気や体のだるさも解消した。

■各砂糖50個分
清涼飲料水は口当たりがいい。しかし前川院長によると、ジュースや缶コーヒーには糖分が容量の10%含まれており、1.5リットルのペットボトル飲料を飲むと、3グラムの角砂糖を50個食べた計算になる。
ペットボトル症候群を防ぐには、のどが渇いたら水やお茶を飲むのが一番だ。「家庭で清涼飲料水の買え置きをやめるなど、親の注意が必要です。」ジュースは飲んでもいい。
問題はその量であり、前川院長は「児童や学生なら1日の限度は500CC」と話す。子どもが夏休みを健康に過ごすためにも、がぶ飲みは禁物だと伝えたい。