「健康トピックス」

北國新聞 ”健康ノート”、”丈夫がいいね”、”健康よもやま話”
金沢有松病院分掲載中

〜春のさきがけ病院食に〜 

(2008年3月28日(金) 北國新聞(ほくりく食歳時記)に掲載分)


北陸の冬には雪がつきものである。早春、その雪の下で寒さに耐えて緑の葉を茂らせる菜は、暖かい日がやがて来ることを告げる。金沢や松任地区のカラシ菜、加賀地方のクキタチ菜、七尾市中島地区の中島菜はそれぞれの地域の食卓に登場する「春のさきがけ」であり、ことに雪の下になった品はやわらかく甘みが豊かで、漬物の素材とする漬け菜として喜ばれてきた。

■血圧を調整
いずれもひと手間かけるとよりおいしくなる菜である。コツを知らないと本来の味を楽しめない菜とも言える。そのため、食生活の変化とともに愛好者が減る傾向にある中で中島菜は群を抜いて注目されている。
かつては地元で「中島カブラ」と呼ばれていた中島菜は、十年ほど前に石川県農業総合研究センターの研究により血圧調整作用がほかの野菜よりもすぐれていることが明らかになったことをきっかけに、全国的な人気者となった。JA能登わかばでは中島菜部会を作って品質管理に心を砕いている。二年前には地域ブランドとして商標登録された。

■漬物にも煮物にも
そのため、現在では金沢で栽培しても中島菜という名で市場へ出荷することはできない。ただし、能登出身者の中には、親から譲り受けた種子を自分が食べるためにまき、ふるさとの春、父母の味をしのぶ人がいる。志賀町富来出身の名舩勝二さん(六五)=金沢市大額二丁目=は父からもらった種で毎年「金沢版中島菜」を作り、甘みと苦みの共存する個性的な菜を味わっている。
名舩さんが必ず作るのは漬物。海水ぐらいの濃い塩水に生のまま漬け、しっかりと重石をきかせて一晩から三日置く。手でもんでアクを抜き、水で洗って、昆布と小口切りにした唐辛子を加えた塩水に漬ける。三、四日もすればできあがり。
煮物にするなら、鍋に生のまま中島菜を入れ、その上に食べやすく切った油揚げをのせ、総量の三分の一ほどだしを注いで火にかける。菜から出た水分で煮るため、血圧調整成分を余さず食べられる。いためるなら、オリーブ油を引いたフライパンでベーコンか豚肉をいためて甘みを引き出したところに生のままの菜を入れる。
名舩さんの中島菜料理にみせられたのが金沢有松病院の吉田千尋理事長(六三)=金沢市有松五丁目=だ。病院で患者に出す冷凍の菜っ葉類の味に納得できず、地物の新鮮な菜っ葉を取り入れたいと思い立ち、三年前から妻景子さん(五七)の助けを借りて野菜を作り始めた。今年は味よし体によしの中島菜を名舩さんの指導で育て、病院で出す予定だ。「味気ないと言われがちな病院の食事に楽しみが加わればうれしい。血圧調整作用を研究すれば、病院食には取り入れにくい漬物を出すこともできるのでは」と期待を寄せている。