「健康トピックス」

北國新聞 ”健康ノート”、”丈夫がいいね”、”健康よもやま話”
金沢有松病院分掲載中

〜腹腔鏡で負担小さく〜

(2010年11月21日(日) 北國新聞(丈夫がいいね)に掲載分)

 腸は約8メートルの長さを持ち、うねりながらおなかの中に収まっている。
ただでさえそう大きくないスペースにみっちりと詰まっているため、何かのきっかけでねじれたり折れ曲がったりする。こうして腸管がふさがる病気が「腸閉塞」だ。
 ふさがった場所に消化された食べ物や消化液が詰まるとおなかが張り、けいれん性の腹痛や吐き気などの症状が表れる。
金沢有松病院の高畠一郎副院長は「なるべく手術をしないで治す『単純性閉塞』と、緊急に手術しないと命にかかわる『複雑性閉塞』の2タイプがあります」と解説する。

■点滴打ち絶食
 単純性閉塞の場合でも入院治療は必要だ。まずは腸の詰まりをこれ以上悪化させないため、点滴で水分と電解質を補給して絶食する。
「軽症であればこの状態をしばらく続けていると治ります」と高畠副院長は話す。
 良くならなければ、ふさがった個所までチューブを挿入し、たまっている消化物や消化液を体外へくみ出す。これでもし治らなければ手術だ。

■複雑性は即手術
 複雑性閉塞は、腸本体だけでなく、腸に血液を送る「腸間膜」がねじれるなどして、腸の血流障害が起きるタイプだ。高畠副院長は「放置すれば、血液が流れなくなった腸管が壊死し、腹膜炎や肺血症で死に至る場合があります」と、緊急手術の必要性を説く。
 腸のねじれを治す手術と聞くとかなり大掛かりなイメージがあるが、ここ10年ほどで腹腔鏡手術が一般的になったため、手術による体へ負担は格段に小さくなり、回復も早くなった。
 腹腔鏡が普及する前の手術では、おなかを20センチ以上切り開かなければならなかった。それに対して腹腔鏡を使えば「鉗子とカメラを入れるための穴を数ヶ所開けますが、大きさはそれぞれ1センチ程度です」と高畠副院長。ねじれを元に戻したり一部を切除したりする作業はテレビモニターを見ながら行う。
 また、開腹手術を行うと、腸同士や腸とほかの組織との間に癒着が起きやすくなることが知られている。くっついた個所はねじれの基点になり、一度手術してもまた閉塞が起きることはまれではなかった。
「おなかを切り開かなくて済む腹腔鏡手術には、再発が起きにくいというメリットもある」と高畠副院長は強調する。