各部門紹介(リハビリテーションセンター)
外科周術期における肺理学療法とは?
がん等で手術が必要になった方には、手術前から理学療法が行われます。
手術後の理学療法の最大目的は肺合併症を予防することです。手術を受けると深呼吸の不足、また薬や痛み等で呼吸運動が制限されてしまいます。このため気管に分泌物(痰)が貯まり、肺に空気を送り込めず『無気肺』をおこす可能性があります。せっかく手術自体がうまくいっても、無気肺から肺炎に移行したり、入院期間が長引いたりする危険があります。
この無気肺を予防するには、手術前から効率の良い呼吸法(腹式呼吸)を理解し実施できるようになっておくこと、そして意識的に強く息を吐いたり、もしくは咳をして痰を出す方法を習得しておくことが重要です。手術後は積極的に痰を出し、呼吸運動を促します。呼吸運動では前述の腹式呼吸や理学療法士が介助して換気を促します。痰を出すには横向きや腹ばいの姿勢で重力を利用したり、また換気を促すことで痰が動きやすくなるため、その後で強く息を吐いたり、もしくは咳をして一気に体外へ痰を排出します。
あお向けで寝たままの状態は呼吸に重要な筋肉である横隔膜を内臓が圧迫し、その動きを抑制してしまうこと、また背中がベッドから圧迫されるため肋骨が広がりにくくなることから、換気効率が低下してしまいます。
必要以上の安静は逆効果であり、できるだけ早期にベッドから起き上がることが必要です。
肺合併症を起こしやすいのは以下のような条件の方であり、特に注意が必要です。
1. 食道・胃・肝臓・胆のう等の上腹部手術
2. 肺切除・心臓手術等の胸部手術
3. 長時間の手術
4. 慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎・肺気腫・喘息)等で手術前から呼吸機能が低下している状態
5. 高齢者
6. 喫煙習慣